アヴェロンでは木々、林間の空き地、河川、さらに大地そのものまでが、強力な魔力に覆われている。こうした魔法による守りやまじないは、その多くがウルサーンそのものと同じくらい古いもので、この森の王国を守ると同時に緑溢れる美しい景観も維持している。森は繁栄と生命に満ちており、ハイエルフは心に悩みができると、アヴェロンの穏やかな野へと赴き、魂をよみがえらせるのだ。
ただし、アヴェロンの森に危険がないわけではない。魔力の風が強く吹く場所には、かならずケイオスの姿があるからだ。裁きの時代においては、森の奥深くの暗がりにはビーストマン(獣人)が巣食っている。禍つ神々に仕える悪魔じみたしもべたちは、冷たく人の近寄らぬ沼地や、古い朽木に隠された深い洞窟に潜んでいる。森に住むハイエルフたちは、久遠の女王とその宮廷が危険に晒されることがないように用心しなければならない。
しかしこうした点在する渾沌の脅威も、色濃くなるばかりの戦争の影に比べると、アヴェロンの番人にとってはさして重要とはいえない。ウルサーンに戻ってきたダークエルフたちは、恨みと復讐心とでその胸をはちきれさせんばかりにしているのだ。
ダークエルフたちの真の目的はローザンにある不死鳥王の玉座だが、侵略者たちにとってはアヴェロンの魔法の森にも大きなチャンスがある。久遠の女王アラリエィールとその宮廷が森の奥深くに疎開して、侵略してきたナガリィン軍から逃れようとするであろうことはダークエルフも承知だ。久遠の女王が発見されれば、捕らえた者は魔虐の王より莫大な報酬を授かることだろう。さらに、アヴェロンの森それ自体がハイエルフにとってはとても大切なものである。この森を荒らし、略奪すれば、ウルサーンの気高い守護者たちの心に手ひどい傷を負わせ、その士気を著しく挫くことになるだろう。
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信用ならない堕ちた同族たちがアラリエィールとその従者たちの痕跡を求めて森を探し回っているあいだ、ハイエルフは自分たちが予想だにしなかった危機に直面していることに気付いた。久遠の女王は姿を消してしまい、彼女の信頼していた助言者でさえアラリエィール女王の行き先を知らないのだ。メルキスの軍が軍事活動を続け、森の王国を破壊し汚染しているあいだ、渾沌の神々が動き出した。アヴェロンでの強奪が、穢らわしい"腐敗の主"ナーグル神のぞっとするような注意を引いてしまったのだ。大いなる変化の主の手先もその数を増し、ティーンチ神の密偵は冷たく瞬きもせぬ目で敵(ナーグル神)のあらゆる挙動を見張っている。
アラリエィールの失踪と、ケイオスの台頭にはなんらかの繋がりがあるのであろうか? もしそうならば、ハイエルフは姿を消した女王を急いで見つけ出さねばならない。さもないと、二度と彼女の姿を見ることはないだろう。
アヴェロンへの攻撃によって、ウルサーン支配を賭けた戦いは、さらにのっぴきならないものになった。アヴェロンはただののどかで時を越えた森ではなく、ほぼすべてのハイエルフにとって心から神聖な、伝統と魔法に満ちた王国なのである。この国を失うことはアナリオン王の高貴な後継者たちにとって耐え難いことであり、ダークエルフは森に一歩深く踏み入るごとに、ハイエルフの激しい怒りをその身に受けることになるだろう。
メルキス配下の戦士たちがアヴェロンと久遠の女王の所有権を唱えるならば、高い代償を支払わされることになるだろう。
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