無明の地

初代のウルサーンの不死鳥王であるアナリオンの死後、エルフたちは難しい選択を突きつけられた。あるものはアナリオンの息子たちの中で唯一存命のメルキスこそが父の跡を継ぐべきだと唱えた。しかし別のものは、アナリオンがカインの剣を抜き放って以降、人が変わってしまったことを恐れ、剣の呪いがメルキス本人にまで及んでいるのではないかと懸念した。結局、アナリオンの血筋ではないヴェル=シャナールがエルフの指導者に選ばれた。

はじめのうち、メルキスは権力への強い渇望と、自分の継承権を拒否したエルフたちへの憎悪を隠していた。かわりに同盟者を集めて戦争で大きな勝利を収め、不死鳥王に次ぐ輝かしい地位にまで登りつめた。それからメルキスは行動に移った。ヴェル=シャナール暗殺し、我こそが正統な不死鳥王であると宣言したのである。成さなければならないことは残りひとつ。メルキスは自分の身を証し立てるため、アシュリアンの社にある聖なる炎に入り、偉大なるエルフの神々の判断を仰がねばならないのだ。


しかしメルキスが炎に歩みいると、炎はメルキスを拒んだ。メルキスは火だるまとなって酷い火傷を負い、下僕達はウルサーン北部にあるナガリィンの地へと野心家の主人を連れ戻った。暗殺の事実が明るみに出ると、ハイエルフたちはメルキス一党に戦いを挑んだ。新しい不死鳥王、"覇者"カレドールに敗北したメルキスは、 ボルテックス(大いなる渦)の魔法を無力化することで、ケイオスの生(き)の力をウルサーンに溢れさせ、敵を滅ぼそうという狂気の計画を実行に移したのである。この企みは部分的にしか成功しなかったが、結果は悲惨なものだった。

荒々しくこの世の終わりかと思うばかりのエネルギーが解き放たれ、ウルサーン北部の土地を引き裂いた。1000フィート(300メートル)もの高さとなった海水の壁がナガリィンに激突し、数え切れないほどのエルフたちが溺死した。最後の瞬間、メルキスと生き残ったソーサラーたちは彼らの巨大な城砦を守る呪文を唱え、城砦を浮城ブラック・アークへと変えたのである。ブラック・アークは西方目指して海を渡り、ニュー・ワールド北部に到達した。メルキスはこの地をナーガロスと名付け、追放されたメルキス一派はダークエルフと呼び習わされることとなった。ダークエルフは自分達の新しい文明を築くことになる。

わずかに残されたナガリィンの跡地は、傷つき歪められ、破壊の魔力によって焼き焦がされた土地である。この灰色の地面と黒い石で覆われた、陰鬱で不毛の荒地には、奇妙かつ変異した怪物が闊歩している。ハイエルフはこの呪われた地を"無明の地"と名付けた。ここは常に闇に覆われているように見えるためだ。

やがてダークエルフたちが戻り、ここが祖先からの土地だと主張するまでに長くはかからなかった。以来、この地の支配権をかけてかつてないほど激しい勢いでふたつの勢力が争っている。

"別離の時代"の壊滅的な戦争によって無明の地は永遠に滅ぼされてしまったが、ハイエルフ、ダークエルフの両軍ともが再びこの地に集結して戦っている。ナーガロスよりの侵略者はボルテックスの支えとなっていた古代のメンヒル(巨石)を探しており、ハイエルフ軍はメンヒルの支配権を二度と渡すまいと奮闘している。メンヒルは偉大な秘術の力の源だが、この力が何者かに改変されるようなことがあれば、いにしえの"別離の時代"にも匹敵するような効果が引き起こされるだろう。


ダークエルフにとって無明の地にはもうひとつ価値がある。この地には遥か昔のアーティファクトやレリックが眠っており、見つけ出せればナーガロスの貴族から褒美が出るのだ。熱心な遺跡漁りたちが、この不毛の荒野でちょっとした宝探しに興じている。いいものを見つければ貴族たちや、ことによっては魔虐の王メルキスその人のご機嫌をとることができるだろう。

ウソリン家の戦士たちにとって厄介なことに、大敵アルカネス家も姿を現した。ダークエルフの水準からしても、両家は互いをひどく軽蔑しあっているのだ。魔虐の王はふたつの貴族の家門の支配者に、無明の地のメンヒル群を支配するよう命じていたのである。メルキスにとって最大のライバルである両者を競い合わせようというのだ。こうすることで、メルキスはウソリン公とレディ・アルカネスのどちらもが、自分の地位を脅かすほどの力を得ないようにと画策したのである。

ナーガロスの戦士たちが過去の遺物を求めて無明の地を探し回っている一方、ハイエルフはとても驚くような発見をしていた。侵略者たちの発掘現場のひとつで戦闘がおこなわれた後、もはや失われたものと思われていた古代の予言の巻物が完全な形で発見されたのだ。古めかしい巻物には、裁きの時代に訪れる不穏な未来が記されていたが、ダークエルフの恐ろしい計画を阻むわずかな望みがあることも示されていた。

予言についての研究と、それがどうしても必要であることをウルサーンの支配者たちに理解させるには、さらなる時間が必要だ。しかし、ハイエルフたちにとって今や時間は貴重なものであり、あっという間に費やされていくものなのだ。ハイエルフ軍の戦線は薄く伸ばされており、軍団の多くがエンパイアやドワーフ領を援助するためオールド・ワールドで戦っているのだ。シャイニング・ガードは侵略軍の侵攻速度を鈍化させるのがやっとで、ダークエルフ軍が内王国に通じる大門に到達すれば、もはや侵略者を食い止めることはできないだろう。

希望のともし火は、燃え盛る前に吹き消されようとしている。

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